大阪大学 大学院工学研究科
電気電子情報通信工学専攻
集積エレクトロニクス講座
計算量子情報エレクトロニクス領域

森研究室



新材料・新構造・新原理を用いたデバイス・集積システムの実現に向けて,計算物理をベースとした理論的な研究を行なっています.量子デバイスにおいて原子レベルで発現する物理現象の解明から,集積システムの高性能化に至る,広い階層をまたぐ研究を行なっています.

極微細デバイスにおける量子輸送シミュレーション

これまでは,電子を古典力学に従って運動する粒子として扱い,デバイスを連続体として扱うという枠組みの中で,半導体MOSトランジスタの設計・解析が行われてきました.しかし,極めて微細なデバイスのシミュレーションにおいては,電子が量子力学に従って運動するという量子性や,デバイスが原子から構成されているという原子論的な効果を無視することができません.そこで,本研究室では,原子論的な量子輸送計算に基づく,デバイス創成シミュレータの開発を行なっています.スーパーコンピュータ富岳などの大規模な計算機で動作させることを目標にしています.

原子層半導体デバイスのモデリング・シミュレーション

原子層1層程度の非常に薄い2次元物質が,トンネルトランジスタなどの革新的な電子デバイスへの応用に向けて大きな注目を集めています.そのような原子層状の物質には,グラフェンや,二硫化モリブデンに代表される遷移金属ダイカルコゲナイド(TMDC)など多種多様な物質があります.さらに,異なる原子層物質を組み合わせたヘテロ構造も実現されています.本研究室では,原子層へテロ構造デバイスやハイブリッド原子層半導体デバイスのモデリング・シミュレーションに関する研究を行っています.

パワーデバイスのモデリング・シミュレーション

シリコンカーバイト(SiC)や窒化ガリウム(GaN),ダイヤモンド(C)などのワイドバンドギャップ半導体を用いることにより,現在主流であるシリコンに比べ,エネルギー効率の極めて高い電力制御デバイスを実現できます.本研究室では,第一原理計算とよばれる量子論に基づく電子状態計算手法をベースに,いまだ物性の良く分かっていないこれら新材料の電気伝導特性を予測するシミュレータの開発を行っています.

フォノン輸送,熱電変換デバイス,熱管理技術

集積回路内で発生する熱の制御が現在大きな課題となっています.この課題の解決を目指し,電子とフォノンの輸送方程式を同時に解く,新しいデバイスシミュレータの開発を行なっています.熱電変換デバイスの高効率化や,計算と熱の物理といった原理的な問題にも取り組みながら,集積量子デバイスの性能向上を目指した研究を行なっています.

シミュレーション技術を活用した半導体デバイスの設計,信頼性予測

シミュレーションを活用してデバイスの設計や解析を行うTechnology Computer Aided Design(TCAD)は,今や半導体デバイスの開発に欠かせない技術となっています.本研究室では,TCADを駆使することにより,新しい半導体デバイスの設計や評価を行っています.

低電圧動作アナログ・ディジタル集積回路技術

センサネットワークやウェアラブルセンサなどには,アナログ集積回路(増幅回路,発振回路,A/D変換器など)が応用されています.これを0.5 V以下の低電源電圧で動作させることで,低消費電力化を目指します.デバイス特性や各種デジタル支援技術の活用に加え,雑音や素子特性ばらつきの統計性なども利用した,革新的な集積回路技術の開発を行っています.これらの技術を結集し,様々な集積システムへの展開も進めます.